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東京ヤクルト・スワローズ

 ついにスワローズが「東京」を頭に入れた。昨年、読売ジャイアンツが「東京」を外してからは、切に願っていた事で本当に嬉しい。そして、この事は大巨人軍に真っ向勝負する事の宣言でもあると捉えている。

 スワローズは長年、浮遊した存在であった。つまり、地元が無かったのだ。一応本拠地を神宮球場に置いている事もあって、東京近郊のファンは多い。しかし、その多くは東京のチームだから応援すると言うよりも、アンチ・ジャイアンツ色が強く、東京にあるから応援しているファンが多い。アンチ・ジャイアンツを否定する訳ではない。阪神タイガースはアンチ・ジャイアンツの筆頭だ。それがある時期よりチーム方針を変え、アンチとしてのブランドからタイガース・ブランドを確立しようと方向転換し、成功した良い例であろう。その「ある時期」とは、野村監督の招聘からである。



 それまでのタイガース・ファンは長年、球団のやる気の無さに悶々としていた筈だ。春先は良くても、夏にはいつもの指定席に。マスコミなどからはセリーグから1球団だけ離れた「タ(他とタイガースをかけている)・リーグ」とも揶揄された。ファンは毎度の事と、夏以降は阪神電鉄に当たり散らす事でそのストレスを発散させて一年を終える事に、一つの安堵感と自虐的な正当性を持たせているような気さえしていた。

 それが、アンチから強いタイガースを目指し、タイガースをブランドとして売り出そうとしたと言えるのが、東京の弱小チーム、スワローズを常勝チームにした野村監督の招聘だ。しかし、野村イズムはスワローズと言う浮遊したチームの選手とは違い、地元の熱烈なそしてお節介とも言えるほどの干渉の中で、強いプライドを持ってしまったタイガースの選手達には中々浸透しなかった。だが、敏感な一部のファンは球団の方向転換に期待していた筈だ。デパートや商店は野村監督を一様に歓迎し、関連グッズなどを売り、ファンはそれに群がった。ファンは「勝つ事」に飢えていたのだ。

 こうなれば話は早い。勝ち負けは別として、当面は勝つチームづくりを目指せば客のニーズを満たす事になる。元々熱狂的なファンが多く、タイガースのファンと言うだけで意気投合する。相乗効果が生まれる下地ができたのだ。チームが勝っても敗けてもその話題で盛り上がる。商談にも欠かせない話題だ。それもこれも、球団が上を目指している事を知っているからである。野村監督は残念な事に私事で降板する事になったが、後に招聘した星野監督でファンの期待は確信に変わったであろう。

 その後の展開は皆さんが知っているので、タイガースの話からスワローズの話に戻ろうと思う。

 先に書いたがスワローズは地に足がついていない浮遊した球団だった。野村監督時代には勝つ事によって、「強い」と言う地面に足を付けた。そして、その「強い地」に立ちたいファンが増え、観客動員も増した。しかし、優勝できなくなると「強い」と言う地を求めたファンが離れて行ったのである。つまり、現在のスワローズが観客動員を増やすには「勝つ」事しかないのだ。

 だが、球団経営にそれほどお金をつぎ込めないスワローズは「常勝」であり続ける事は困難である。良い選手を育ててもチームを離れ、他球団から良い選手を獲得する事もままならない。あのジャイアンツでさえ、現在は「常勝」ではないのだ。では、どうやって観客動員を増やすか。それは勝ち負けを別として、チームに愛着を持ち、応援をしてくれるファンを育成する事ではないか。その一つが地域性(足を地に着ける事)だと考えるのだ。

 高校野球が良い例だと思う。高校野球はフレッシュな選手が、一所懸命勝ち負けのために全力でプレーする。もちろん、これが好きだと言うファンも多い。だが、高校野球はチーム関係者、高校の関係者・生徒だけが応援に行くのではない。地元だと言うだけで応援に行く人もいる。また、応援に行かずともテレビなどで見れば、同じ出身県のチームを何となく応援したり気にしてしまう。それは人間が「どこかに所属していたい。所属している場所が良いものであってほしい。」と言う意識が働くからである。

 元々、スワローズは親会社のヤクルトが商品を全国販売している事もあって、地域性を持たせたくないので「東京」と言う文字を入れなかったと聞く。しかし、地方の社員でも名刺には「本社:東京」と入っている筈だ。東京にあるスワローズが「東京」を付けていても全く違和感は無い筈ではないか。「東京」を隠す事で得になる事があるのだろうか?

 スワローズにして幸な事に読売ジャイアンツは「東京」を捨てた。ジャイアンツは言うなれば「日本ジャイアンツ」を目指しているのだろうか。国内だけの1リーグで試合をするチームが「日本」となっても漠然としてしまって訳が分からなくなる。増して「読売」など愚の骨頂だ。一企業を応援する一般のファンがどれだけいると言うのだ。これは今までのスワローズのように、浮遊したチームになってしまうのではないだろうか? それを回避するには、人気が落ちてきた現在、これまで以上に当面の収益を度外視して、ジャイアンツ贔屓の全国放送をし、常勝し続けなければならないだろう。それができるとは到底思えない。その後は成績不振→視聴率の低迷→観客動員の減少→監督の交替→ファンの不満増長・・・と落ち込んで行くのではないだろうか。もう、昔のようにジャイアンツ戦だけしか観られないと言う時代は終ったのだ。もちろん、歴史のあるチームなのでその歴史という地に立ち見続けるコアなファンもいるだろう。しかし、その歴史も他の球団があっての事。プロ野球は共存共栄を目指さなければ、衰退の道を辿るしかないのだ。

 スワローズも「東京」と言う文字を付けただけではいけない。地名を付ける事、それは少なくともその地で還元の輪を作る事が必要だ。地元の住民や商店、企業はスワローズを応援、もり立て、スワローズは地域にその利益を分配するシステムを考えなければならない。それも長い目で見て構築しなければならない。それらが構築でき順調に運営できるようになって、やっと地域密着が果たせるのだ。

 古田PMから始まる、今後のスワローズ、プロ野球に期待したい。
by chankin1 | 2005-12-17 02:39 | Sport

ほとんど毎日、明治のミルクチョコレートを食べていますw


by ちゃんきん